一方で、米国企業のMeta社は、自国の社会問題に対してはかなり迅速に対策を講じます。
Meta社は今年2月に生成AIのコンテンツに警告ラベルを表示させるなどポリシーの改訂を発表しましたが、これは主にアメリカ大統領選挙に関わるフェイクニュース対策として実装されるものです。
また過去には、SNSを通して生命にかかわる危険な行為を投稿することが主に米国で流行しましたが、Meta社は素早くポリシーを改訂し、それらのコンテンツを削除対象と規定するなどの対策を講じました。
しかし、日本やアジア地域を含め他国のマーケットで生じたSNSに係る問題に対しては基本的に無関心で、ポリシー改定などの対策を講じることはほとんどありません。
SNSプラットフォームが独自に定めるポリシーも自国の価値観やマーケットの実情を優先して決定され、それ以外の国や地域の実情は後回しにされているようです。
Meta社の日本法人であるFacebook Japan株式会社は、日本やアジアマーケットでSNSを運用するための実務的業務を担うための組織であり、重要な意思決定権はありませんが、今回Meta社より公開された文面を見る限り、日本法人ではなく米国の本社から出された英文をそのまま日本語に訳したものと考えられます。
現実として、現在世界中で利用されているSNSサービスは、X社、Meta社、TikTokを運営するByteDance社の寡占状態であり、今回のような大きな問題が生じたとしても広告収入の要となるユーザー数を大きく減らすことはないと経営判断がなされているように見受けられます。
他にも、投稿や広告審査の問題点として、現在のポリシー規定上、投稿や広告が詐欺として認定されるには複数の条件が必要であり、セミナーへの参加を促すような内容だけでは基本的に削除対象とされないことなどが挙げられますが、広告出稿に際し事前のスポンサー考査がほとんどなされていないなど、プラットフォーム各社が詐欺広告の問題に真剣に取り組んでいないことが根本にあります。
マスク氏やザッカーバーグ氏といったトップダウン型の経営者は、自らが有望と見込んだ新規事業や、プラットフォームに目新しい機能を追加することには惜しみなく開発予算をつぎ込んでいますが、プラットフォーム事業の中では“地味な”コンテンツモデレーションには、残念ながらあまり積極的な姿勢が見られません。
先日、タイを拠点とする中国人らの大規模なSNS投資詐欺グループが摘発されたという報道がありましたが、SNSプラットフォーム各社が犯罪収益により広告収入を得ているという現状を国際的にイシュー化し、社会的責任を果たすよう強いプレッシャーをかけ続け、重い腰を上げさせることが必要です。
(2024年4月17日 文責:井ノ口樹)
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