【緊急投稿】有名人なりすましSNS投資詐欺広告の根本的要因とは?

昨今、SNS上に跋扈する有名人を騙った投資詐欺広告が大きな社会問題として認識されるようになりました。

既に多くのメディアによりこの問題が報道され、SNSプラットフォーム(運営企業)への批判が高まる中、FacebookやInstagramを運営するMeta社が公式に声明を発表しましたが、実際にネットやSNSの投稿審査の現場に携わってきた者として、それらへの違和感や詐欺広告が減らない根本的要因について列記したいと思います。

Meta社の公式声明文を要約すると、

・投稿や広告のコンテンツモデレート(審査)業務には多くの人員と予算を費やし、解決に向けて取り組んでいる
・問題の解決には自社だけではなく社会全体の取り組みが必要である

と主張していますが、多くの方々がこの声明に疑問を感じたことと思います。

まず、今回の社会的混乱を招いたことに対するお詫びや謝罪の言葉が全く見られず、開き直りや責任転嫁ともとれる主張に終始していることです。

これはMeta社だけではなく海外企業によくある傾向ですが、特に訴訟社会の米国では、自らの非を認めることは後々の訴訟に発展した場合不利となる法的リスクが生じるため、企業が自らお詫びや謝罪の意を示すことはほとんどありません。

また、SNSプラットフォームは、コンテンツモデレート業務に係る人員や予算を削減する傾向があります。

Meta社においては今年1月、これまで日本にてコンテンツモデレート業務を委託していたベンダー企業との契約を突然解消し、100名規模の日本人契約スタッフが同月中に雇い止めされる事態となっています。

これらの業務については公にされていない部分が多く、実態については明らかではありませんが、高コストとなる日本人スタッフを雇用するにあたり、他ベンダーに業務を移管させる、もしくは業務そのものを東南アジアなど海外拠点に移しコストダウンを図ることが目的と考えられます。
モデレーターとしての雇用条件は悪化し、これまでと同様の業務サービス品質が担保されるとは限らないでしょう。

一方で、米国企業のMeta社は、自国の社会問題に対してはかなり迅速に対策を講じます。

Meta社は今年2月に生成AIのコンテンツに警告ラベルを表示させるなどポリシーの改訂を発表しましたが、これは主にアメリカ大統領選挙に関わるフェイクニュース対策として実装されるものです。

また過去には、SNSを通して生命にかかわる危険な行為を投稿することが主に米国で流行しましたが、Meta社は素早くポリシーを改訂し、それらのコンテンツを削除対象と規定するなどの対策を講じました。

しかし、日本やアジア地域を含め他国のマーケットで生じたSNSに係る問題に対しては基本的に無関心で、ポリシー改定などの対策を講じることはほとんどありません。

SNSプラットフォームが独自に定めるポリシーも自国の価値観やマーケットの実情を優先して決定され、それ以外の国や地域の実情は後回しにされているようです。

Meta社の日本法人であるFacebook Japan株式会社は、日本やアジアマーケットでSNSを運用するための実務的業務を担うための組織であり、重要な意思決定権はありませんが、今回Meta社より公開された文面を見る限り、日本法人ではなく米国の本社から出された英文をそのまま日本語に訳したものと考えられます。

現実として、現在世界中で利用されているSNSサービスは、X社、Meta社、TikTokを運営するByteDance社の寡占状態であり、今回のような大きな問題が生じたとしても広告収入の要となるユーザー数を大きく減らすことはないと経営判断がなされているように見受けられます。

他にも、投稿や広告審査の問題点として、現在のポリシー規定上、投稿や広告が詐欺として認定されるには複数の条件が必要であり、セミナーへの参加を促すような内容だけでは基本的に削除対象とされないことなどが挙げられますが、広告出稿に際し事前のスポンサー考査がほとんどなされていないなど、プラットフォーム各社が詐欺広告の問題に真剣に取り組んでいないことが根本にあります。

マスク氏やザッカーバーグ氏といったトップダウン型の経営者は、自らが有望と見込んだ新規事業や、プラットフォームに目新しい機能を追加することには惜しみなく開発予算をつぎ込んでいますが、プラットフォーム事業の中では“地味な”コンテンツモデレーションには、残念ながらあまり積極的な姿勢が見られません。

先日、タイを拠点とする中国人らの大規模なSNS投資詐欺グループが摘発されたという報道がありましたが、SNSプラットフォーム各社が犯罪収益により広告収入を得ているという現状を国際的にイシュー化し、社会的責任を果たすよう強いプレッシャーをかけ続け、重い腰を上げさせることが必要です。


(2024年4月17日 文責:井ノ口樹)
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